ホラリー-せんせいじゅつ【ホラリー占星術】
占星術といえば、人間がこの世に生を受けた瞬間の日時を用いて作られるホロスコープを読み解き、人の性格や運命を占うことで知られています。しかし出生図を用いるのではなく別の図を用いることによって、失くした物品の場所を突き止めたり、近い将来の出来事がうまく行くかどうかを判断したりするのに適した占術もあります。これをホラリー占星術と言います。
ホラリー占星術とは
ホラリー占星術を簡単に言えば、「質問に対する答えを導き出すため」の占術です。ある質問がなされた瞬間の日時と場所からホロスコープを作成し、その質問の答えを読み取ります。そもそもホラリーとは、英語の“horary”にあたります。“horary”は“時間”を意味する“hour”が語源となっており、「時間の、時間に関する、毎時の」などの意味となります。つまりホラリー占星術は『その瞬間の占星術』と直訳されるのです。一般的な占星術と言えば、人の生年月日や出生時刻を用いてホロスコープを作成し、人の運命や宿命を占うものです。場合によっては、お店が開店した瞬間のホロスコープを作成して、そのお店がどのように発展するか、お客の入り具合、売り上げや評判はどうかなどを占うこともあります。このように、人やイベント・出来事を占う従来の占星術とは異なり、その瞬間に立てられた質問や、起きている問題の答えを導き出すのがホラリー占星術です。このようにその瞬間の出来事を占う占術としては、西洋のタロットや東洋の易がありますが、ホラリー占星術はこれらに近い占術と言って良いでしょう。
3つのメリット
ホラリー占星術は、出生図を読み解く通常の占星術と比べて、次の3つのメリットがあります。1つ目は、出生図からは読み解くことのできない多くの事柄が占えるという点です。例えば、「今後、付き合っている相手との関係はうまくいくか」「今仕事で手掛けているプロジェクトはうまくいくか」「これから出かける海外旅行では無事に過ごせるか」などです。ありとあらゆる人生の出来事を占うことができるのが一番のメリットです。
2つ目は、質問の答えや問題の解決策を得ることができる点です。出生図は宿命的なことを占うものですが、ホラリー占星術では質問に対する単純な「はい」「いいえ」の答えはもちろん、例えば鍵を落としてしまった場合、「失くした鍵はどこにありますか?」といった問題の解決策をも導き出すことができます。質問が発生した瞬間に作成されたホロスコープには、その質問が解決するまでの事柄が網羅されているのです。
3つ目は、物事の成り行きや良し悪しがはっきりするという点です。出生図は人の性格や宿命を知るのに長けている分、特定の問題については方向性がわかる程度に留まりますが、ホラリー占星術の場合は、物事の良い悪いはもちろん、いつ、どこで、どのように進むのかが明確にわかります。よって、「やるべきかやらざるべきか」の選択を正しく行えるというメリットがあるのです。
ホラリー占星術のホロスコープ
ホラリー占星術を行う場合、おおよそ次のような手順で読んでいきます。まずはホロスコープを作成し、質問に応じて読むのを重視するハウスを選びます。ハウスは12個あり、それぞれの分野に分かれているので、質問の分野に合った的確な判別を行います。その後、ホラリーのテクニックを用いて、質問や問題にかかわる人物たちの関係を探っていき、最終的な結論を出していきます。
ではホラリー占星術において、いつ、どこで、どのようなタイミングでホロスコープのチャートを作成するのでしょうか。一般的には、「質問者から投げかけられた質問の内容を、占う側が理解して占おうと決意した瞬間」が適切だと言われています。例えば、自分が人からの質問を受けて占う場合、その質問者から質問を受けた瞬間ではなく、自分がその質問について正確に理解し、その事柄について占おうと思った瞬間のチャートを作成します。自分のことを占いたいと思ったときは、「占いたいことが明確になった瞬間」のチャートを作成するのがいいといわれています。場所は、いずれの場合もチャートを作成する人が位置している場所のデータを使います。
読みやすい場合と読みにくい場合
ホラリー占星術では、質問の内容によっては読みやすい場合と読みにくい場合があるといわれています。
一般的に読みやすい場合とは、短期的で具体的な質問で、答えを具体的に出すことができたり、「はい」か「いいえ」がはっきり決まっていたりするものです。言い換えると、目先のことつまりシンプルな質問ほど、ホラリー占星術で正解が導き出されやすいと言えます。例えば、「失くした鍵はどこにありますか?」「その鍵はいつ見つかりますか?」という質問は、比較的答えが出やすいと言えるでしょう。
一方、読みにくい場合とは、長期的で質問者の人生全体にかかわってくるものです。例えば、「私は結婚できますか?」「私は幸せになれるでしょうか?」といった質問です。これは出生図で読むほうが適している質問です。また、その瞬間の質問であっても、複雑で抽象的な質問は読みにくいと言われています。例えば「意中の相手は今私のことをどう思っていて、今後どんな関係になれるのか。彼女がいるようだけれど、別れる余地はあるのか?」などです。登場人物が多く、「どんな関係になるか」などの具体的な答えを出すことがむずかしいため、より高度な技と知識が必要になります。
ホラリー占星術で失せ物探しをする
ホラリー占星術は、失せ物探しに適していると言われています。例えば「鍵を失くした」「財布を落とした」などといった場合です。ホラリー占星術でホロスコープを作成すると、その失くした物がどこにあるのか、また、いつ見つかるのかなどを明確に知ることができます。また失せ物は物だけでなく、人でも同じように占うことができます。行方不明になった自分の子どもや兄弟姉妹、夫や妻など、家族捜索によく利用されます。また犬や猫などの生き物も同様に探すことができます。ただし、生き物はペットなどの一度所有したことがある生き物である必要があります。
一般的に、失せ物を探す場合、ホロスコープの第2ハウスか第4ハウスを使い、どちらかのハウスの支配星の状態を探っていきます。また、失くした物自体は、「月」が表すこともあるようです。その失せ物を表す天体がどのハウスにあるかによって、実際にどこにあるかを特定することができるといわれています。例えば、家の中に限っていえば、第1ハウスの場合、玄関や質問者の部屋にあり、第8ハウスの場合、お風呂やトイレにあるといった具合です。
ホラリー占星術におけるハウスの意味
ホラリー占星術では、ハウスの意味をよく理解して知っておくことが正しい解釈につながると言われています。例えば、第1ハウスは質問者自身のこと、第7ハウスは夫や妻、パートナーのことや、取引相手を指します。また、第4ハウスは家族や家の中、キッチン、料理など。第10ハウスは仕事や会社、地位・権威、基本的な資金などを表します。ホラリー占星術は質問者の状況によって、同じ言葉でも大きく意味が変わってきます。例えば、質問者が「友人」と言ったとしても、会社の同僚であれば第7ハウスに相当しますが、一緒に休日に釣りに行くサークル仲間であれば第11ハウスになります。つまり、ポイントはハウスの意味を理解することと、質問者の状況によって正確に当てはめることと言えるのです。
ホラリー占星術の鑑定例
ホラリー占星術では、実際にどのような質問が鑑定され、解決されているのでしょうか。具体的な鑑定例を見てみましょう。
AとBのどちらの病院にかかるべきか?
質問者は、自分の父親が病をわずらっており、かかりつけのAという病院と、有名な専門医のいるBという病院のどちらにかかるかを迷っています。ホラリーのホロスコープからは、天体のアスペクトからA病院から紹介されたB病院が良いこと、家からの方角からもB病院が適切であると判断されました。結果、B病院に入院した質問者の父親は無事に手術に成功し、回復の一途をたどっています。
失くした本はどこにあるか?
質問者は、失くした本が一ヶ月探しても見つからず困っていました。そこで、ホラリーのホロスコープから、パートナーか会社の同僚が持っていることが読み取れました。質問者は独身で、特に付き合っている相手もいなかったので、会社の同僚や取引先の相手が浮かび上がってきました。結果、一ヶ月前に自宅に立ち寄った会社の同僚が、本を誤ってカバンに入れて持ち帰ってしまったことが発覚。同僚に問い合わせ、後日、本は無事に手元に戻ってきました。
片思いをしている彼と付き合えるか?
ある女性の質問者は、長年片思いをしている男性との今後の関係を知りたいと思っていました。ホラリーのホロスコープで、自分と相手を表す天体を見ましたが、その2つの天体同士が互いにアスペクトがなく、かかわりを持たない構図になっていました。つまり、これは2人の間には特に何も起きないということを意味します。ただし、友達としての関係は良い角度にあったため、恋愛や結婚へと発展するより、友人として関係が発展する可能性が見い出せました。質問者は迷いが断ち切れ、友達と割り切って接することができるようになりました。
気をつけるべきこと
ホラリー占星術はとても便利な占いですが、万能というわけではありません。実際、古来からホラリー占星術では、占う前に、占うべきかどうかを判断する工程が必要であると言われています。先にも紹介した通り、ホラリー占星術には読みやすい場合と読みにくい場合とがあります。また、出生図で読むほうが適している場合もあります。また、古くから盗難などの犯人を突き止めるような質問は避けるべきといわれてきたため、犯人探しも基本的には行われません。また、月がボイドである場合も、読むのは避けるべきという説もあります。ボイドとは、天体が移動中、他の天体とメジャーなアスペクトをとらない状態のことです。特に月はホラリーを読むときに、非常に重要な役割を果たす天体なので、月がボイドの場合は「この先何も起きない」ことを暗示することもあり、読むこと自体を避けることもあるようです。