まるせいゆ-ばん【マルセイユ版】
タロット占いはカードの出た絵柄の内容によって占うもので、現代においても人気の占い方法のひとつです。このタロット占いの絵柄の起源となるものには種類があり、その一つがマルセイユ版と呼ばれるものです。マルセイユ版とはどんな絵柄で、タロット占いにどのように影響するものなのでしょうか解説します。
マルセイユ版の起源
タロットカードは15世紀のイタリアが起源として考えられており、カードゲームの形態で広く楽しまれてきました。ヨーロッパ各地に広まっていく過程で、占いといった未来を導くものの要素が付随されていきました。タロットカードが広まっていく過程で、製造や流通を担ったのがフランスです。16世紀末あたりに、リオンやルーアンといった都市で盛んであったとされます。さらに地中海沿岸部でも生産が盛んになり、17世紀にはマルセイユにおいても生産が行われていました。こうした地域で生産が盛んであった理由は、カード製造の要となる木版印刷や銅板印刷の技術が高かったことが挙げられます。世界的に技術革新が顕著になっていた時期で、東洋やアフリカなどの文化や技術が行き交う場所に地中海沿岸はあり、交流が盛んであったため製造にも高度な技術を反映できたとされています。
時代を経て1930年代、カードメーカーのグリモー社がマルセイユのカードメーカー、ニコラ・コンヴェルが出していたタロットを復刻しました。これがマルセイユ版というものが広まったきっかけです。マルセイユでタロットカード生産が盛んであり、かつカードが魅力的なクオリティであったことが間接的な理由であるのです。
マルセイユ版の派生形ウエイト版
このマルセイユ版から進化したものが、ウエイト版というタロットカードです。タロットカードは78枚をワンセットとし、これをタロットパックと呼びます。大アルカナという22枚の絵札と、小アルカナという56枚の数字の入った札で構成されます。これがマルセイユ版の原型で、ここから派生したものがウエイト版です。ウエイト版の特徴は、小アルカナの札にそれぞれスピリチュアルな意味合いを込めたイラストを入れたことにあります。また、大アルカナの配列を変えたことも挙げられます。マルセイユ版でカード番号8は正義(JUSTICE)とされ、11は力(STRENGTH)です。これをウエイト版では8を力とし、11を正義としました。
マルセイユ版はカードの絵柄と数字から何が言えるのかを推測して意味を見出すこととなります。これにはカードに描かれた人物の表情や仕草、視線の先に何があるかなど見て、占うことが求められます。占いを担う人物のタロットカードへの習熟度具合がものを言うところで、一定の技術力が求められます。 ウエイト版はすべてのカードに絵が描かれていて単純にカードの持つ意味から占いの答えを導き出すことができるのです。ウエイト版はこうした要因から詳細なシチュエーションが求められる占い内容に適していて、相手の感情を読み取ることもしやすいとされています。いわば具体的な事象や条件を提示できるものに対して向いているものです。
マルセイユ版から魔術や神秘的なものへの憧憬、いわゆるカバラ思想に基づいたウエイト版への系譜はタロットカードの歴史でもあります。この流れでどちらが真のタロットカードであるかの議論もあるほどです。マルセイユ版を知っておくことはタロットカードの知識を深めていくうえで、避けては通れないと言えるでしょう。そしてタロットカードが広まっていく契機となったマルセイユという街にも思いを馳せてみたくなるのではないでしょうか。 占い師さんが主催しているタロットカードの講座ではマルセイユ版やウエイト版といったタロットカードの種類についても詳しく解説しているものもあります。タロットカードへの好奇心が一層深まるものになるのではないでしょうか。