しび-とすう【紫微斗数】
中国の占術の中でも多くの人々から人気を博し、四柱推命と共に古くから盛んに行われてきた紫微斗数（しびとすう）。生年月日と出生時刻を用いて、人の性格から運命まであらゆることを占える占術です。「東洋の占星学」ともいわれており、西洋占星術のように星を利用して占います。中国の有名な占術といえば四柱推命ですが、紫微斗数は四柱推命と比べて、より人の心理を占うのに適しているといわれています。では紫微斗数について、詳しく見ていきましょう。
紫微斗数とは？
紫微斗数は、中国で発祥した占術で、中国の代表的な3種類の占い「命術（めいじゅつ）」「卜術（ぼくじゅつ）」「相術（そうじゅつ）」のうち、命術に該当します。命術とは、生年月日を使って個人の性格や一生を通じた運命や他人との相性を占う占術です。
中国版占星術ともいわれており、その占いには星を利用します。紫微斗数の紫微とは、北極星のことを指します。この紫微の星をメインとして、他の数種の星を利用し人々の「運命＝数」を斗（はか）るのが紫微斗数の意味です。しかし、西洋占星術のように、実在の星を利用するのではなく、架空の星を使って占うところに特徴があります。
一方、西洋占星術との共通点もあります。それは、十二宮に星を配置して人生のできごとを考える点です。紫微斗数では、主にこの架空の星と十二宮との組み合わせで、星が持つ意味や、星と宮との組み合わせの吉凶などから、人が持って生まれた運命判断を行います。
紫微斗数の魅力
紫微斗数は、西洋占星術や四柱推命と比べると知名度は低いですが、とっつきやすく学びやすいことや的中率が高いことから、台湾では非常に人気があります。なぜ学びやすいのかといえば、西洋占星術や四柱推命と比べて、紫微斗数では分類された人間のタイプを覚えれば、解釈することができる点にあるようです。古くは中国の唐の時代に民間で起こったといわれており、国家で人材登用に使われていた四柱推命とは一線を画しています。
紫微斗数で何が占えるのか？
紫微斗数で占えるのは、人生のあらゆる事象です。人生を12個のカテゴリーに分ける「十二宮」のそれぞれの意味から、占える範囲を知ることができます。
十二宮とは
命宮、兄弟宮、夫妻宮、子女宮、財帛宮、疾厄宮、遷移宮、奴僕宮、官禄宮、田宅宮、福徳宮、父母宮
例えば、先天的な個人の基本的性格や人生の傾向、兄弟姉妹との関係はどうか、恋愛・結婚運やふさわしい異性の傾向、子どもに恵まれるかどうか、子どもが生まれた場合、その子どもはどのような子になるか、財運の有無や手段、かかりやすい病気や体質、対人関係の運勢、部下との関係、仕事運や適職、住居に関する運勢、趣味や楽しみ、両親との関係など多彩な内容を知ることができます。
また、これらの十二宮のうち、一つだけ「身宮」と呼ばれるものが割り当てられます。人によって異なりますが、「身宮」に該当する宮の意味は、より後半の人生で充実してくるといわれています。身宮とは、いわゆる、「後天的な運勢」を示す重要な宮を表しています。例えば、仕事運を表す「官禄宮」が自分の身宮である場合、後半の人生においては仕事にまつわることが重要度を増してくることになります。
メインとなる甲級主星14星
紫微斗数では、多くの星を利用して占いますが、中でも、重要視されているのが、「甲級主星」と呼ばれる14種類の星です。
甲級主星とは
紫微星、貪狼星、巨門星、廉貞星、武曲星、破軍星、天府星、天梁星、天機星、天同星、天相星、七殺星、太陽星、太陰星
これらの星には、それぞれ意味があります。例えば、紫微星には「謙虚で正直、威厳と気品があり、礼儀正しい」といったような意味があり、先述の十二宮のどの位置に入っているかをかけあわせて運勢を占います。
補助的に使用する甲級副星15星と乙級星
紫微斗数では補助の意味で甲級副星という15個の星を使うことがあります。主に、後天的で、努力によって変えられるような環境や人間関係などを表します。甲級主星との組み合わせによって、その運勢や意味合いが変化します。ただし、人生への影響力では、甲級主星のほうが強いといわれています。
甲級副星とは
文昌星、文曲星、佐輔星、右弼星、天魁星、天鉞星、禄存星、擎羊星、陀羅星、火星、鈴星、化禄星、化権星、化科星、化忌星
また、次いで乙級星も併せて使うのが一般的です。乙級星は、甲級副星の次に人生に影響力を及ぼすといわれていますが、影響力の強い星もあるので比較的よく使われます。
星の吉凶について
これらの甲級主星や甲級副星、乙級星などの星にはそれぞれ吉凶があり、吉星と凶星、もしくはどちらでもない星に分類されます。例えば、吉星には紫微星、天機星、太陽星などがあり、凶星には廉貞星、貪狼星、巨門星などがあります。吉凶と聞くと、吉が善、凶が悪と解釈されがちですが、必ずしもそうではありません。吉星であっても悪い影響を及ぼすことはありますし、凶星であっても、良い影響となることもあります。例えば、吉は「柔」の性質を持ち、凶は「剛」の性質を持つという解釈もあります。
紫微斗数の命盤
紫微斗数では、まず生年月日と出生時刻から、命盤というものを作成します。これは、個人が生まれた瞬間を図式化したものです。よく他の占術では、出生時刻がなくとも占えるといわれることがありますが、紫微斗数は、時間の変化の細かいところを見ていくものなので、出生時刻は必要不可欠の占術です。命盤を作るときには、まずは生まれた年の干支を出します。干支とは十干十二支のことで、旧暦に直したそのいずれかが自分の干支として割り当てられます。また、生年月日と生まれた時刻も旧暦に直して命盤に反映していきます。そして先述の十二宮が円形状に配置され、その中に星が配置されます。この十二宮と星との関係や意味から占っていきます。例えば、命宮に入った星が何であるかを見れば、その人の性格や人生の傾向などの吉凶や、どのようなものになるのかがわかります。命宮については、最も重視されるべき宮であり、はじめに読み解かれることになります。そして命宮をベースにして、他の11宮、それぞれが持つテーマに基づいて人生で起きるあらゆる事象について占っていくことになります。例えば、命宮に強い星が入っていると、起業家や商売人に向いているといわれており、弱い星が入っていると、組織に属した人生を送るといわれています。ただし、独立起業がいいのか、組織に勤めるのがいいのかは、財帛宮と官禄宮の状態で判断することもあります。財帛宮の状態が良い場合には独立起業、官禄宮の状態が良い場合には組織に勤めるのがいいというのが一つの解釈としてあります。とはいえ、安易にどちらが強いからこうなる、というように一概にはいえないのが紫微斗数のむずかしさでもあります。まず、その人の本質を表す命宮を踏まえる必要がありますし、他の条件が悪ければ、独立起業はむずかしいといった判断になることもあるからです。
甲級主星14星のタイプについて
紫微斗数は、タイプ別に分類して解釈するため、学習のしやすさがあると述べました。そこで、それぞれのタイプを簡単にご紹介します。
- 紫微星：気品があり聡明で礼儀を重んじ高貴な印象を与える一方、プライドが高く独善的。精神性を重視します。
- 貪狼星：欲が強い反面、交際上手で活発なところが魅力です。現実的で合理的な考え方をします。
- 巨門星：口が達者、おしゃべりといわれますが、良い方向に働けば鋭い指摘や弁論術に長けた面が表れます。
- 廉貞星：実務に強く現実的な性格で、権威を求めます。集中力と戦略に基づく実行力にかけては他星に引けをとりません。
- 武曲星：実直な性格で、やると決めたらすぐに物事に取り組みます。頑固で負けず嫌いですが、責任感が強いため重宝されます。
- 破軍星：型破りの気質を持つ変わり者。好き嫌いの激しさや感情の起伏の波で苦労する一方、独特の感性を活かせる面もあります。
- 天府星：温厚で聡明といえばこの星。伝統を重んじる保守的なところがある一方、社交的で問題があれば着実に解消します。
- 天梁星：世話好きでリーダーとして後輩から慕われます。独善的なところがありますが、先見の明があり、堂々としています。
- 天機星：英知に富み、学問の星です。思慮深く、計画性があるため、人からも信頼されます。ただし、やや実行力に欠けるところも。
- 天同星：博愛主義で奉仕の精神にあふれています。社交的で誰とでも仲良くできる反面、優柔不断な面もあります。
- 天相星：補佐役として最適な穏やかな性格。自己犠牲精神がうまく働けば人望を集めますが、裏目に出れば、陰に隠れてしまいます。
- 七殺星：闘争心が高く、何でも果敢に取り組みます。忍耐力もありますが、気性が激しいため、人生はダイナミックです。
- 太陽星：明るく元気、行動力もあり、健康的な生活を送ります。一方、自己主張が強く、自信過剰な面が玉に傷。
- 太陰星：ロマンチストで母性的。感受性豊かで慈愛の精神を持ちます。裏目に出ると感傷的、神経質さが目立ってきます。
相性はどうやって占うのか
紫微斗数で異性との相性を占うには、まずは自分の夫妻宮の状態を見るのが一般的ですが、実際に相性を知りたい相手の命盤を作成し、自分の命盤と突き合わせることによって、その関係性を読み解くということもされます。自分の夫妻宮に入っている星が、相手の命盤の命宮に入っているという場合、相性が抜群に良いという解釈が最も一般的です。しかし、これ以外にもさまざまな相性の見方がありますし、夫妻宮ではあくまで好みのタイプを表すだけで、実際の結婚相手はまったく別のタイプになることも往々にしてあるといわれています。
現在、紫微斗数は、インターネット上で自動的に命盤が出るところもあり、比較的簡単に接することができます。出生時刻を用意して詳細に自分の生まれ持つ性格や運命などを占ってみるのも良いでしょう。
